「また辞めてしまった」「応募が全然来ない」——採用活動に悩む経営者や人事担当者の方からこうしたお悩みを伺うことが多いです。そしてその対処として、求人媒体を増やしたり、人材紹介会社に依頼したりする。しかしまた離職が起こり、同じ問題が繰り返される。
この記事では、そのサイクルを抜け出した2社の実例をお伝えします。
これまでの記事でお伝えしてきた「資産化採用」と「5つの受け入れの仕組み」が、実際の現場でどう機能したか。数字だけでなく、何を変えたからそうなったのかを具体的に解説します。
目次
2社の事例をお伝えする前に、前提として押さえておきたいことがあります。
採用活動に行き詰まっている企業の多くは、仕組みの問題を抱えています。
求人媒体への掲載を止めると応募が減少する、人材紹介会社への依存度が高く採用単価が年々上昇する——こうした状態は、採用活動が「掛け捨て型」になっているサインかもしれません。
費用をかけても採用ノウハウもコンテンツも社内に残りずらく、募集再開時にはまたゼロから始めなければならないこともあります。
対して「資産化採用」は、自社の魅力を言語化した情報・Web上に積み上がるコンテンツ・採用プロセスの仕組み・データとして蓄積されるノウハウを、自社の「資産」として育てていく発想です。この資産が育つほど、採用活動にかかる費用と手間は下がり、自社にフィットする人材が集まりやすくなります。
以下の2社は、どちらもこの「仕組みを変える」という転換を経て、大きな変化を実現しました。

九州エリアで特別養護老人ホーム・ショートステイ・デイサービスなど複数の介護事業所を運営する社会福祉法人(従業員約300名)。「ご利用者・職員・地域の三方よし」を掲げ、地域介護の要として長年信頼を集めてきた法人です。
しかし、介護職の採用難と離職の常態化が続き、現場の疲弊が増していました。
採用してもすぐ辞める。人が足りず、残っているスタッフの負担が増す。負担が増えるからまた辞める——この連鎖が固定化していました。採用単価は高騰し、人材紹介会社への依存度も上がる一方。
さらに、複数の施設を山間部にも展開していたため、人口減少という避けがたい制約も重なり、従来の手法ではどうにもならない状態になっていました。
スケッチが最初に取り組んだのは、採用活動の全体像を可視化することです。
何にお金をかけていて、どこから応募が来て、どこで離脱しているかを整理することで、「場当たり的な対応の積み重ね」が問題の本質を覆い隠していたことが見えてきました。
次に行ったのが、管理職・現場職員合同の「自社の魅力言語化ワークショップ」です。
「人間関係が良い」「シフト調整が柔軟」「小規模ならではの距離感でご利用者に関われる」——外からは伝わっていなかったリアルな強みが、職員の言葉から次々と出てきました。
これらをもとに、ハローワーク・地域チラシ・既存職員によるリファラルなど、コストをかけずに機能するチャネルを再設計しました。
さらに、採用してから定着させるための受け入れ体制も見直しています。
管理職を対象にしたコミュニケーション研修を実施し、新入職員との初期接点の質を高めることで、「入社直後の孤立感」が生まれにくい職場づくりを進めました。
支援後、月間の応募数は平均2倍に増加。
採用単価は従来比95%削減を実現し、人材紹介会社・派遣会社への依存はゼロになりました。
応募チャネルのほぼすべてが、無料媒体またはリファラルで完結している状態です。
人材紹介という掛け捨て型の採用から、自社の魅力の言語化・無料チャネルの再設計・リファラルの仕組み化という「自社に残り続ける資産」への転換が、この結果を生み出しています。
さらに、この事例には続きがあります。
採用活動の仕組み化と運用体制が整ったことで、同法人はある新規事業案件の入札に自信を持って挑戦。
「安定した人材獲得の仕組みを有している」という点を審査でアピールし、複数法人が競合する中で案件を勝ち取りました。
資産化採用によって構築された採用力が、採用現場だけでなく、事業競争力にも波及した事例です。

東海エリアの運送業者で、楽器の輸送から保管・メンテナンスまでを一気通貫で手がける専門集団。
繊細な楽器を扱うための職人技と、文化を守るという誇りを持つ、業界でも特異な存在です。
長年、社員の紹介や縁故をベースにした採用で組織を維持してきましたが、公募による採用は10年間成立せず、組織の高齢化が進んでいました。半年で応募2件という状況が続き、入社してもすぐに辞めてしまう早期離職の悪循環も起きていました。
「縁故採用とベテランの経験値に依存した組織モデル」が限界を迎えつつあり、次世代に技術を繋ぐ「若手採用と定着」が急務となっていました。
支援で最初に行ったのが、「楽器輸送」という仕事の再定義です。
「運送業=体力仕事・きつい」という先入観を取り上げ、この仕事が持つ本当の価値を言語化しました。
「一生モノの職人技が身につく」「文化を守る誇りのある仕事」——こうした言葉は、求人票や媒体の紹介文では出てこない、徹底したインタビューと対話の中から引き出されたものです。
若手が入社をためらう理由も丁寧に拾いました。「体力的に続けられるか」「技術を習得できるか」「将来のキャリアが見えない」——こうした不安を一つひとつ言語化して払拭するコンテンツを作り、採用サイトや求人票に反映しました。
定着のための設計にも力を入れています。アルバイトから正社員へのステップを明確にし、キャリアパスを可視化。「入社後にどう育っていけるか」が見えることで、入社意欲と定着率の両方を高める設計にしました。
支援から1年で、応募数は前年の2件から38件へ(19倍)に。1年で5名の採用に成功しました。
10年間採用ゼロだった状態から、「選んで採用できる」体制への転換です。
採用活動の効率も大きく改善されています。
工数を最小限に抑えながら、自社の文化や仕事の意義に共感して来た候補者を選べるようになったことで、採用後の定着にもつながっています。「採用できなかった10年間」を振り返ると、問題は求人の出し方ではなく、伝える内容と受け入れの設計にあったことがわかります。
2社に共通していることがあります。どちらも、採用費を大きく増やしたわけではありません。
使った媒体も、かけた時間も、むしろ以前より整理されています。
変わったのは「何をどう伝えるか」という情報の設計と、「入社後にどう迎えるか」という受け入れの設計です。
早期離職の多くは「思っていた会社と違う」という感覚から来ています。
採用段階でリアルな情報——良い面も大変な面も——を正直に届けることで、「それでも入社を選んだ人」が増えます。覚悟を持って入社してくる人は、少しの壁にぶつかっても踏みとどまります。
辞める理由が最初から少ない状態を作ることが、定着への一番の近道です。
介護施設の事例では、職員インタビューで言語化した魅力がリファラルを動かし、運送業の事例では自社の魅力を再定義し、採用サイトのコンテンツを刷新。「若手に響く言葉」を届けられるようになりました。
一度作ったコンテンツは掲載期間とは関係なく機能し続けます。
これが、掛け捨て型との根本的な違いです。
前の記事でお伝えした「5つの仕組み」——求人段階でのミスマッチ防止、プレオンボーディング、初日の体験設計、30-60-90日プログラム、社内広報——は、どれか一つを整えるだけでも効果はあります。
ただ、採用活動から受け入れまで一気通貫で設計されたとき、定着という結果が安定して出るようになります。
2社ともに、この「入り口から出口までの設計」を変えたことが、採用数と定着率の両方に変化をもたらしています。
「もっとお金をかければ解決するのか、それとも別の問題なのか」——採用活動に行き詰まった時、こんな問いに直面することもあるかもしれません。
2社の事例から見えてくるのは、費用を増やすよりやり方を変えることのほうが効いた、という事実です。応募が来ない・定着しないという問題は、情報設計と受け入れ設計の問題である場合がほとんどです。
変化の入り口は、「現場インタビューで自社の魅力を言語化すること」です。
そこから始まる一連の設計が、採用費を抑えながら定着率を上げるという、一見矛盾して見える結果を生み出します。
自社の採用活動が今どういう状態にあるか——応募という入り口の問題なのか、受け入れの設計の問題なのか、それとも情報の伝え方の問題なのか——まずそこを整理することが、最初の一手になります。
むしろ中小企業ほど向いている手法です。資産化採用の出発点は、社員インタビューと求人票の見直しです。特別な予算がなくても始められますし、自社の規模が小さいほど「現場のリアルな言葉」が引き出しやすく、コンテンツとして機能しやすいという側面もあります。
採用費用を下げることと、採用の質が下がることは別の話です。人材紹介会社への依存を減らして採用単価が下がった介護施設の事例では、応募の質は変わらず、むしろ「自社の魅力に共感した人」が応募してくるようになっています。費用を削ることが目的ではなく、「自社にフィットした人が自ら来る導線を作る」ことが目的です。コンテンツで正直に情報を届けることで、入社前のギャップが減り、定着率が上がる——という順番で考えると、コスト削減は結果として後からついてくるものです。
採用サイトは、あくまで「言語化した魅力を届ける器」です。器を先に作っても、中身が整っていなければ機能しにくいです。最初のステップは、現場社員へのインタビューで「自社の魅力を言語化すること」です。「なぜここを選んだのか」「一番やりがいを感じる瞬間はいつか」——こうした問いから出てきた言葉が、求人票の文言を変え、面接での伝え方を変え、やがてコンテンツとして形になっていきます。採用サイトや広報ツールはその後でも遅くありません。「言語化」が整っていれば、どのチャネルでも機能します。
株式会社スケッチでは、採用・組織開発・人事制度設計まで一気通貫で支援しています。
「自社の採用の現状を整理したい」「どこから手をつければよいかわからない」という方は、まずお気軽にご相談ください。 初回のご相談は無料で承っています。
(お問い合わせ・無料相談:https://sketch-consulting.co.jp/contact/)
インタビュー+”各媒体へ展開可能なマスタ求人原稿”作成 1職種 30,000円(税別)
インタビュー(1名〜2名)+ 求人原稿作成をセットで、1職種から依頼可能です。
特定媒体用の原稿ではなく、各媒体へ展開しやすい”マスタ求人原稿”を作成します。
こんな方に: 特定の職種の採用を強化したい/まずは1職種から試してみたい/自社の魅力を言語化したい
お問い合わせフォームの「その他のご質問やご用件」欄に「スポット支援希望」とご記載ください。

お問い合わせ |sketch
お問い合わせフォーム ご入力いただいた情報は、お問い合わせ内容へのご回答の目的のみに利用いたします。
sketch-consulting.co.jp