採用お役立ち情報

採用してもすぐ辞める、を繰り返す組織に共通する3つの構造

「また辞めてしまった」という連絡が、採用担当者や経営者のもとに届く。
そのたびに、次の募集をかけて、面接をして、内定を出して、受け入れ準備をして——という工程が繰り返される。

採用活動費はかかり、担当者の時間も取られます。
現場は手薄な状態で踏ん張りながら、次の方の入社を待ち続けています。

この記事では、そのサイクルから抜け出せずにいる経営者・採用責任者の方に向けて、
「なぜ定着しないのか」を感情論や個人の資質だけで捉えるのではなく、
構造的な課題として整理していきます。

読み終えたとき、自社でまず手をつけるべきポイントが一つでも見えていれば幸いです。

「採っては辞める」が続く組織で、何が起きているのか

離職率の数字を見るとき、まず「うちは高いのか、低いのか」という比較から入ることも多いのではないでしょうか。厚生労働省の令和6年「雇用動向調査」によると、全産業の離職率は14.2%。離職率の数字だけで見ると実感が湧きにくいかもしれませんが、「社員の約7人に1人が毎年入れ替わる」と置き換えると、採用や育成への影響をより具体的に捉えやすくなります。

ただ、離職率の数字それ自体が高いか低いかよりも、「なぜ辞めているのか」「どの時期に集中しているのか」というパターンを観察することのほうが、対策につながりやすいです。

特に中小企業のお客様からの相談として多いのは、入社後3ヶ月から1年以内の早期離職です。
ここに集中しているとき、原因は概ね「採用時の期待値と入社後の現実のズレ」にあります。
能力や適性の問題ではなく、情報の設計と受け入れの構造に問題がある、という整理ができます。

採用活動にかかるコストを踏まえると、早期離職が企業に与える影響はさらに大きくなります。
リクルート就職みらい研究所の「就職白書2020」によると、2019年度の中途採用における1人あたりの平均採用コストは約103万円。採用してすぐに辞められると、この投資の多くが損失につながる可能性があります。人材紹介経由であれば、採用者の年収の30〜35%が成功報酬として発生するため、実質的な損失はさらに大きくなるケースもあります。

費用だけではありません。早期離職が続くと、既存社員の負担が増え続けます。
疲弊からさらに離職が出るという連鎖も起きやすくなります。
採用しても辞める、辞めるから採用する、採用するから現場が詰まる、という構造が固定化していきます。

現場で観察できる、定着しない組織の兆候

早期離職が続いている組織を見ると、いくつかの共通した傾向が見えてきます。

「なぜ辞めたのか」が把握されていない。

退職した理由を、表向きの「一身上の都合」でそのまま処理している、退職面談を実施していない、あるいは実施しても形式的で実態が掴めていないというケース。原因が積み上がらないまま次の採用に進むため、同じ構造で同じパターンが繰り返されやすいです。

入社後に「放置される時間」がある。

配属初日に十分な説明がなく、誰に何を聞けばいいのかわからない、というケースは珍しくありません。「背中を見て覚えろ」という文化が根付いている職場では、育成がすべて担当者個人に委ねられていて、教え方やフォロー体制に差が生まれやすいです。その結果、新しく入った人が不安や戸惑いを感じてしまうことがあります。

「入社後のギャップ」が生まれている。

退職理由として上がりやすいこのフレーズは、採用段階での情報不足のサインです。求人票の情報不足もしくは良いことを並べすぎている、面接で現場の実態について話しきれていなかった、といった情報のズレが、入社後に「こんなはずではなかった」という感覚につながります。

現場責任者が採用活動に追われ始める。

欠員が出るたびに現場責任者や管理職が面接対応に追われ、本来の業務に十分な時間を割けなくなる。採用活動が戦略的な活動ではなく、場当たり的な対応になってしまうこともあります。

これらは、どれも個人の問題ではありません。仕組みの不在と情報の設計不足が、こうした現象として現れているという見方ができます。

定着率を上げるために、まず整理しておきたい3つの視点

打ち手を考える前に、整理しておきたいことがあります。定着率の問題は「入社後のフォロー」だけで解決することは難しいです。入社前からの採用活動全体を見直すことも、重要な視点になります。以下の3つのポイントを順に確認してみてください。

ポイント① 採用段階での「期待値の調整」ができているか

求人票や面接で、良い面ばかりを伝えていないでしょうか。また、情報量そのものが少なく、求職者がイメージを補完しながら応募しているケースもあります。「大変なこと」「入社後にギャップを感じやすいこと」も含めて、できるだけ実態に近い情報を伝えることが、定着には重要です。これは一見すると採用のハードルを上げるようにも見えますが、実際には「理解した上で入社する人」が増え、結果として離職率の改善につながりやすい傾向があります。

どこまで伝えるか、伝え方のバランスは難しいですが、「入社前に知っておきたかった」と後から言われる情報がある場合、それは採用段階で十分に伝えきれていなかった可能性があります。

ポイント② 入社前から入社初日の体験が設計されているか

内定を出してから入社当日までの期間、候補者は不安を抱えやすい時期です。「本当にこの会社でよかったのか」という気持ちが動く時期でもあります。この期間に何も接点がないと、そのまま辞退につながることもあります。

入社後の初日についても同様です。声をかける人がいない、席が準備されていない、役割の説明がない、といった初日の体験は、その後の職場への適応や定着にも影響します。初日のスケジュールを事前に組んでおくだけで、新しく入った人が感じる不安は大きく変わります。

ポイント③ 入社後の最初の90日に構造があるか

入社後の最初の数ヶ月は、新しく入った人が「ここでやっていけるか」を判断する重要な時期です。その中で、適切なフィードバックを受けられるか、小さな成功体験を積めるか、何を期待されているかが明確になっているか、といった要素が、その後の定着に影響します。

OJTが担当者に丸投げされていて、フォローの内容が属人的になっている場合、この時期に必要なサポートが届かないことがあります。「30日・60日・90日でそれぞれ何を習得し、どう評価されるか」という枠組みを作るだけで、新入社員が感じる不安は変わります。

やりがちだが、効きにくい対処と、順番を間違えがちなこと

定着率の問題に取り組む際に、よく見かける対処があります。

給与や福利厚生を上げれば解決する、という発想。

報酬の改善は大切ですが、早期離職の要因は報酬だけではありません。実際には、「入社前後の期待とのギャップ」や「孤立感」「オンボーディング不足」など、職場への適応に関する課題が影響しているケースも多く見られます。給与改善は中長期的な定着施策として重要である一方、入社直後の離職防止には、受け入れ体制やフォロー設計も欠かせません。

採用の入口を広げることから始めてしまう。

定着の問題を「そもそも応募が少ないから」と、求人媒体を増やしたり広告費を増やしたりすることがあるかもしれません。ただ、入り口を広げても出口の穴が塞がれていなければ、採用活動費だけが積み上がっていきます。だからこそ、採用数を増やす施策と並行して、定着に向けた受け入れ体制や育成設計を整えていく視点が重要です。

「離職の原因が個人にある」という前提のまま対策を打つ。

離職した方への評価が批判的な雰囲気になっていると、退職の理由を正直に話してもらいにくくなることがあります。退職面談が形骸化するのも、この空気が背景にあることが多いです。問題を個人に帰属させる文化のままでは、構造的な改善が進みにくくなります。まず「離職は組織の設計の問題」という前提に立てるかどうかが、変化の起点になります。

まとめ

定着率の問題は、離職をした個人の問題ではありません。入社前から入社後の最初の数ヶ月にかけての「設計の不在」が積み重なった結果として起きています。

整理すると、見直すべきポイントは3つです。採用段階で期待値を正直に調整すること、内定から初日までの体験を設計すること、入社後90日の受け入れに構造を持たせること。この3点に順番に手をつけることで、早期離職は減らしやすくなると考えられます。

一度にすべてを整えようとしなくて構いません。まず自社に「一番大きな穴」はどこかを特定することから始めてみてください。その穴が見えた時点で、次のアクションも見えやすくなるかと思います。


スケッチでは、採用・組織開発・人事制度設計まで一気通貫で支援しています。 定着率や離職率のテーマで整理に詰まったときは、お気軽にご相談ください。
(お問い合わせ:https://sketch-consulting.co.jp/contact/)

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